岡山市職員措置請求書

 1 岡山市長に対する措置請求の要旨

岡山市が、財団法人岡山市シルバー人材センターに対して執行しようとしている
  1億1600万円の補助金の支出は違法なので、当該支出の差止めを求める。

2 措置請求の理由

(1)請求人は岡山市に所在する特定非営利活動法人である。

(2)平成19年9月、岡山市が100%出資する財団法人岡山市シルバー人材
 センター(以下、「シルバー財団」という)が多額の欠損と借入金を生じさせている
こと、シルバー財団は財団法人岡山市公園協会(以下「公園協会」という)から50
00万円・財団法人厚生会(以下「厚生会」という)から4700万円の融資を得て金
融機関からの借入金を返済したが両団体からの借入金の返済時期が迫っていることが、
発覚した。

(3)岡山市は、平成19年9月定例岡山市議会に、シルバー財団に対して1億
2000万円の運営費貸付金を貸し付ける内容を含む補正予算案(第一次補正予算案と
いう)を提出し、岡山市議会はこれを可決した。ただし、市議会は可決にあたって、
第三者で組織する経営検討専門委員会の検討を経て、市議会保健福祉委員会が支出を了
承するまでの間、前記貸付金の支出を凍結することを要請した。岡山市長は経営検討
専門委員会の検討を経て、平成19年11月定例市議会において市議会保健福祉委員会
に前記貸付金執行の凍結の解除を求めたが、市議会は凍結解除に応じなかった。

(4)岡山市長は、平成20年3月7日、岡山市議会に、前記補正予算のうちシ
ルバー財団に対する貸付金の部分を減額修正するとともに、シルバー財団に対し1億
1600万円の補助金(以下「本件補助金」という)を支出するという内容を含む補
正予算案(以下「第二次補正予算案」という)を提出した。

(5)第二次補正予算案は、シルバー財団に対する補助金以外の、岡山市にとって現
実に必要な支出を多数含んでおり、市議会がこれを否決することは、市長との政治的全
面対決を覚悟しなくてはならないので、政治的観点から非常に困難である。前述の第一
次補正予算案が可決された経緯に徴しても、第二次補正予算案は可決される蓋然性が非
常に大なので、本件補助金の支出は、近い時期に執行される蓋然性が大である。

(6)本件補助金の支出は、以下の理由により違法である。

@ 現在岡山市から同財団に対する補助金交付の根拠規定となっている「岡山市シ
ルバー人材センター運営費補助金交付要綱」(及び、「高齢者生活援助サービス及び高
齢者活用子育て支援事業費補助金交付要綱」及び「地域高齢者社会参加促進事業費補助
金交付要綱」)によれば、市が同財団に交付する補助金の使途は特定の補助事業にかか
る特定の経費に限定されている。従って、同財団の一般的資金不足の救済を目的とする
補助金の交付は、現行の要綱を逸脱している。

A 上記の、「市が交付する補助金の使途は、特定の補助事業にかかる特定の経費に限
定され、一般的資金不足の救済を目的としない」という原則は、市が交付する補助金の
全部に共通する大原則である。この原則を崩す補助金を支出することは、将来における
補助金の濫用的な交付につながる危険が大きいので、許容されるべきでない。

B 「岡山市補助金等交付規則」は、補助金等の交付の申請は、対象となる補助事業
について事業計画書、収支予算書等を添付してしなければならない旨を定めているの
で、同規則が、「補助金は、特定の補助事業にかかる特定の経費にあてるために支出
される
もので、一般的資金不足の救済を目的として支出されるものではない」という原則に立
っていることは明らかであり、本件補助金の支出は、同規則に違反している。

C 「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」は、補助金等の交付の申請を
しようとする者は補助事業等の目的、内容、経費等を記載した申請書を提出することと
定めており、同法もまた「補助金は、特定の補助事業にかかる特定の経費にあてるため
に支出されるもので、一般的資金不足の救済を目的として支出されるものではない」と
いう原則に立っていることが明らかである。従って本件補助金の支出は、同法の趣旨に
も違反しており、この点からも違法である。

D 本件補助金の大半の使途は前記公園協会・厚生会からの借入金の返済である。第三
者からの特定の借入金の返済にあてることを目的とする補助金の支出は、前記の法、規
則、原則に反することが著しいので、違法性は明らかである。

E シルバー財団が負っていた民間金融機関からの借入金債務は、公園協会・厚生会か
らの借入金によってすでに全額返済されているので、財団の事業資金不足状態は大きく
軽減されており、岡山市が1億1600万円もの補助金の支出を行う必要はない。
(両団体はもともとその余剰資産を貸し付けの財源としているので、両団体に対する返
済は条件を変更して長期にわたって行うことが可能であり、かつ相当である。)

従って本件補助金の支出はその必要性を欠いているので、その点からも違法である。

F シルバー財団が負っていた民間金融機関からの借入金債務については、シルバー財
団の理事長(元岡山市水道事業管理者)がその連帯保証をしていた。また、公園協会
・厚生会の代表者ら(公園協会の代表者は現岡山市副市長、厚生会の代表者は元岡山
市助役)は、シルバー財団への貸付について各法人の理事会の承諾を得ることなく貸付
を実行しており、もし当該各貸付の回収が不調となった場合には、それによって各法人
に生じた損害につき、賠償責任を負うべき立場にある。

従って、

ア シルバー財団に対する1億1600万円もの補助金支出の真実の目的は、シルバ
ー財団の資金不足の解消にあるのではなく、公園協会・厚生会にシルバー財団への貸
付金を回収させることにある。これが実行されれば、公園協会・厚生会はシルバー財
団から貸付金の全額返済を受けることになるので、その代表者らは潜在的に負ってい
る前記の損害賠償義務を免れることになる。

イ 公園協会・厚生会の貸付は、岡山市保健福祉局長からの強い要請により岡山市
のシルバー財団にたいする貸付が実行されることを当然の前提として、これがなされ
るまでの間シルバー財団の民間金融機関からの借入金を解消させるためのつなぎ融資
としてなされたものである。この貸付の顕著な効果として、シルバー財団の民間金融
機関からの借入金債務の連帯保証をしていた同財団理事長の保証債務が確定的に消滅
した。公園協会・厚生会の貸付は、岡山市の貸付ないし補助金支出と一体のものと
して意識されて行われているので、本件補助金の支出が行われれば、それはシルバー
財団の理事長の連帯保証責任を解除するために行われたと同一の効果を有することに
なる。

シルバー財団も、公園協会・厚生会も、民間の財団法人であり、その理事者は自分の
経営に関する行為について、法に従って保証債務や損害賠償義務を負担し履行するべき
である。本件補助金の支出は、岡山市民の負担においてこれらの理事者らの責任を解
除し、あわせて市保健福祉局長の政治的責任を解消する目的、すなわち納税者の負担に
おいて市の元ないし現高級官僚を救済する目的で行われるものである。

従って、本件補助金の支出は、その目的の上からも違法である。

G 前述の経営検討専門委員会は、岡山市が行った調査結果(シルバー財団には使途
不明金は確認できないとしていた)に基づいて、シルバー財団の破綻について理事者ら
に対して法的責任を問うことは困難との見解を示した。しかし岡山市は、同委員会の
解散後になってシルバー財団に7600万円の使途不明金があることを明らかにし、しかも
同委員会の上記「結論」を盾にとって理事者らの法的責任を問わないとの姿勢を墨守し
ている。このような状況下で本件補助金を交付することには公益性がないので、本件補
助金の支出はその点からも違法である。

H 地方自治法第2条第14項は、「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては
、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなけ
ればならない」と定め、また地方財政法第4条第1項は、「地方公共団体の経費は、そ
の目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない」と
定めている。これらの規定は、いずれも地方公共団体の財政の健全化確保の目的から規
定されたものであり、地方自治法第2条
16項・17項の法意に照らせば、単に執行担当
職員に対して事務のあり方を示すにとどまるものではなく、上記各法条の趣旨が著し
く損なわれ、社会通念上も著しく妥当性を欠く場合には、これらの法条に違反する行
為は違法かつ無効となるものである。

本件補助金の支出は、前述のとおり、市の補助金交付に関する規則・原則等に違背
し、必要性・公益性がないので、経済的合理性にも法的正当性にも全く欠けた行為で
ある。従って、本件支出は、地方自治法・地方財政法の前記規定の地方公共団体の財
政健全化確保の目的を没却し、社会通念上もきわめて妥当性を欠く行為であって、前
記各法条に反し違法である。

(7)よって、地方自治法第242条第1項の規定に基づき、証拠書類を添付して、
頭書のとおり、厳正な措置を請求する。

 3 添付書類

(1)証拠書類各写     各 1 通

             平成20年 3月11日

                   請求人    

                 住 所 岡山市乙多見347番地

        名 称 特定非営利活動法人市民オンブズマンおかやま

                    代表者代表  重田龍三

岡山市監査委員 殿